リアルドールと紅の破壊者ー第16回

リズ:エリーさんは私のことが好きですか?
エリー:なんだ?好きだとさっき言っただろう
リズ:あ、いや、人間として!です!私は人間じゃないですけど・・性格というか、人間性を見て私ってどうなのかな~とふと思ったので。
エリー:ああ、まあ、好きだな。ちょっと強引なところもあるが・・お前は丁寧だし意志もしっかり持ってるし、普通に考えてとても人気タイプだと思うぞ。
リズ:そうなんですか・・
エリー:どうしたんだ、急に

ラブドール

リズ:いや・・期限も迫ってきているようですし、人として嫌われたままで破壊されるのは嫌だな、と思いまして
エリー:ああ、別にそんな心配はしなくていいよ。ちなみにオレのことはどうなんだ?
リズ:え、エリーさんのことですか?そうですね。穏やかですし優しいですし、好きですよ人間として!
エリー:そうか、それは嬉しいな。
リズ:エリーさんはやっぱり優しいですね。私のお願いも聞いてくれて、一緒に形見も探してくれて、エリーさんと居ると、楽しい・・本当に、最期に会えたのがあなたで良かったです。期限が来たら私は破壊される。そんなことはわかっていますが、もう少しだけ、あなたと一緒にいることを許してもらっても良いでしょうか。
エリー:楽しそうだな、リズ。
リズ:ふふ、楽しいですよ!

ラブドール

エリー:それにしても、俺たちは全部の部屋を調べ終えたよな。どうして見つからないんだろう・・調べ切れていないところがあったのかもしれないな。リズ、もう一度全部の部屋を探してみるか?それとも、他にも部屋があるとか・・
リズ:あ、すみません、今まで必要ないと思って言っていなかったんですが・・1つだけ、調べてないところがあります。
エリー:どこだ。
リズ:地下です。
2人は地下に入りました。

リズ:暗いですから、お気を付けて。
エリー:平気だ。リズも転ぶなよ。
リズ:ここ、私が初めに目覚めた場所なんですけど、暗すぎてあまり調べられなかったんですよね。
エリー:まあ、こんな暗闇じゃなな・・お前はこの真っ暗の中を明かり無しで歩いたんだろ?勇気あるな。
リズ:えへへ・・まあ、他に手がありませんでしたし・・
エリー:じゃあ、行くか

ラブドール

エリー:・・!?なんだ、この血痕。
リズ:どうしました?
エリー:いや、え?どうしたもこうしたも。お前は、分からないのか?
エリー:・・・これが、リズの居眠りした棺か。中のこの赤い花は・・菊の造花か?お前の髪飾りと同じ花だな。
リズ:あ、そういえばそうですね!菊だったんですね、これあまり気にしてませんでした。
エリー:それ、リズによく似あってるよ。
リズ:ふふ、ありがとうございます!これ、旦那さまが私に贈ってくれた髪飾りなんです。
エリー:へえ・・良いな。それにしても、ここには特に物があるということはなさそうだな。やっぱり他の部屋をもう一度調べた方が良いのか。リズの記憶のことも、どうにかしなければならないし。ただひとつ・・気になるのはやはり、この血痕の末尾に、何かあるはず・・
リズ:うーん、何もありませんね・・上に戻りましょうか?
エリー:リズ、待て、ここに何か・・あっ
リズ:えっ!?
エリー:なんだこれ、梯子が・・地下への通路か?
リズ:え、え?こんなところ、あったんですか?全然気が付きませんでした。
エリー:お前、この血痕を見ても何も思わないのか?普通に考えば、驚いたりするもんだが。
リズ:え?これ、血だったんですか!?ただのシミか何かかな、と思っていました・・それにしても、流石にこの先には旦那様の形見なんてないと思いますが、私、少し怖いです。
エリー:でも上には何も無いからな。行くしかない。
リズ:そうですよね。い、行きましょうエリーさん!
2人の真っ暗の先に踏み出しました。

ラブドール



ねえあなたはさ、どうしてそんなに、非道でいられるの?
私たちも、生きているのに!!
冷血!悪漢!薄情者!
許されないわ、よりにもよってあなたが壊すなんて
この・・罪人が!!

エリー:うわ・・この先も、血痕が酷いな。
リズ:まがまがしい雰囲気・・空気も冷たいですね。エリーさん。こ、怖いので手を握っていても良いですか?
エリー:ああ、もちろん。なんだろう。本当に嫌な予感がする。この先にはきっと何かがある。確実に、俺たちの終わりが、近づいている。気分が悪い。ここに居ると、嫌なことを思い出してしまう。いや、大丈夫だ。彼女は・・そんな子じゃないから。そう、そんな彼女を、オレはもうすぐ失ってしまうのか。嫌だ。
リズ:エリーさん?大丈夫ですか?先程から立ちとまっていますが、
エリー:ああ、悪い。平気だ。
リズ:ここは空気が悪いですからね・・体調を崩されてしまうのも当然でしょう。一度上に戻りますか?
エリー:いや、いい。大丈夫だ、行こう。

リアルドールと紅の破壊者ー第15回

ルース:似合ってる似合ってる!どう?それ気に入った?
リノーツ:まあ、綺麗だし好みではあるかな。ありがとね
ルース:えへへー!それ仕事にも付けていってね!
リノーツ:いや、それは止めとくよ。壊したら悪いし。
ルース:いーの!それ、お守りの意味も込められてるから!リノを守ってくれるよ!
リノーツ:ふーん、お前にしちゃ良いセンスだね。意外と良い寄り道だったかもね。じゃあオレは行くから。
ルース:あ、待って!リノ明日はお休みなんだよね?何か予定あるの?
リノーツ:まあ、図書室で勉強したり部屋で本を読んだりして、ゆっくり過ごす予定だよ。
ルース:そうなの?じゃあおれと遊びに行かない?
リノーツ:ムーリ。ゆっくり過ごすって予定は暇ってことじゃないからね?そもそもそれまで帰って来れるかわかんないし。お前、明日は午後から仕事が入ってるでしょ?絶対放り出すなよ。
ルース:わかってる!明日はお姉さんと約束もしてないし!じゃあリノ、明日一緒に図書室で勉強してもいい?
リノーツ:良いけど、珍しい、なんで急に?
ルース:なんとなく?
リノーツ:ふーん。
ルース:じゃあ明日ね!おれは午後から居ないから明日の午前に一緒に図書室に行こ!
リノーツ:待って、だからオレそれまでに帰って来れるかわかんないんだって、案外時間食うかもしれないしさ。
ルース:えー!?頑張って帰ってきてよ!
リノーツ:わがままかよ!まあ、分かった。努力はするよ。じゃあオレはもういくから。お前はもう寝なよ。
ルース:やった、おれ待ってるからね!行ってらっしゃーい!
リノーツさんは部屋に出た。

ラブドール

ルース:なんとなく、約束とかしないとリノともう会えなくなっちゃうような気がしたの。絶対帰ってきてね。

ルース部屋に出たリノーツさん
リノーツ:まさかあいつからプレゼントをもらえるなんて日頃の感謝ね、ちょっとだけ、嬉しかったかも。オレに仕事を押し付けてるって自覚してるなら、その感謝をもっと別の方に使ってほしいけどね。やば、かなり時間を食っちゃったな、急ごう。
リノーツはホールのドアーの前に来た。

ラブドール

リノーツ:ええと、場所はうわ、郊外の山奥?遠くない?あいつどこまで遠出してんの。つーかこの通信機器ホント便利だね。ま、できるのは連絡と地図を見ることくらいだけど。今オレは当たり前のように使ってるけど、高価過ぎてまだ民衆には普及してないんだっけね。少し前は無かったのに、宝石を使いだしてから急に出てきた感じ。地図機能で場所の名前も分かるんだっけ?ここはマーガレット邸?聞いたことないな。数時間もあれば着けるかな。さっさと行って終わらそう。というか、戦争が終わって100年も経ったのにまだこんなにドールが残ってるなんて、昔は本当にドールに頼り切ってたんだなあ?オレも小さいころは、ドールなんておとぎ話だと思ってたけど。眠っていたドールが次々に目覚めて、世に溢れていく。それが世界の妨害者とならないように、文化保全を理由にして破壊して回るなんて、常人なら気が狂うよ。やってることは人殺しと変わらないんだからさ。一応記憶持ちは保護する契約だけど、そんなのは滅多に居ない。オレらはただ破壊するだけだ。オレはまだ耐性があるし、ルースもまあまあ平気そうだけど、エリーは・・夢を見るんだ、リノーツ。ドールたちがオレの周りに寄ってきて「私たちは生きているのにどうして」って、「悪魔だ」って口々に罵られる夢。なあ、俺はどうしたら良いと思う?どうしたら、良かったんだろう。

リノーツ:お前みたいな優しいやつは、これから破壊するリアルドールの言葉なんか聞いちゃいけないんだよ。その言葉が、耳から離れなくなるから。
シーンはリズとエリーが居る場所に変えました。

ラブドール

リズ:ない、ですね。
エリー:ああ、めぼしいところは全て探してみたが、なかなか見つからないな。
リズ:すみません、エリーさん、私のわがままに付き合わせてしまって。
エリー:いや、いいさ。こうなったらとことん付き合うよ。それにしても、どうしてこうも見つからないんだ?あったのは俺が見つけた手紙だけ。本当に、彼の持ち物が丸ごとどこかに消えてしまったような。
リズ:このまま形見が見つからなかったら、私は一人で死んでしまうのでしょうか
エリー:そんなに落ち込むなよ。大丈夫、きっとどこかにあるはずだ。
リズ:ふふ、慰めてくれるんですか?エリーさん、意外と優しいですよね。会ったばかりのエリーさんは淡々としていて、厳しい人なのかなと思ったんですが、話しやすくて、色々なことを話せて、私嬉しいです。
エリー:ああ、まあ、アレは仕事モードというか、な。オレもリズと話せて嬉しいよ。
リズ:ふふ、良かったです。
エリー:さて、じゃあ、休憩もそろそろ終わりにするか?
リズ:あ、待ってください。もう少しだけ、良いですか?
エリー:ああ、そうだな。それならもう少しだけここに居ようか。

リアルドールと紅の破壊者ー第14回

ルース:んー!この場所面白いね!でもまさかエリーの部屋がこうなってるとは思わなかったな~なーんかよく部屋に引きこもってるな~とは思ってたけど、服作ってたからなんだね?すごいね!
リノーツ:まあ、アイツ本当に自分のことを周りに知らせないと言うか、口に出さないからねえ・・アイツがそういう趣味を待ってることは知ってたけど・・まさか、ここまで悩んでたなんてエリーのことは何でも知ってたつもりでいたけど・・案外知らないものもあるんだね。
ルース:へー!仲良いんだね?

ラブドール

リノーツ:仲が良いって言うか・・オレが小さいころ、エリーと会ったことがあるってだけだよ。まあ、エリーはそのことを忘れちゃってるみたいだし、今はオレがあいつのことを一方的に知ってるって感じ・・
ルース:あーでもそっか、おれリノがエリーと仲良く喋ってるところ見たことないかも。そのことエリーに言ったの?
リノーツ:前に一度ね。でもアイツ、意味わからないくらいオレのことを忘れちゃってるからムカついて・・ある程度距離とってるから、あんまり会話もしてないかも。
ルース:そっかあ・・まあでも仕方ないのかもね?10年以上前の記憶は大体薄れちゃうもんだからね~
リノーツ:んー・・そうだよねえ
ルース:色々見て回ったしそろそろ出よっか?
リノーツ:そうだね。
2人はエリーの部屋に出た

ラブドール

ルース:てかジュンはどこに居るんだろー?この辺りには居なくない?
リノーツ:もしかしたら部屋に戻っちゃったかもね。北棟に行く?
ルース:そうしよっか!待ってリノ、ジュンそこに居るよ!ジュン居た居た!でも、寝てるみたいだね。どうしよう、起こす?
リノーツ:おい、こんなところで寝てんな!!
ジュン:うわあ!!!あ、あー、なんだリノーツさんか。驚かせないでくださいよ。
ルース:ホントだよ、リノ、その言い草は酷い。
リノーツ:うるさいなあ、起きたんだから良いでしょう?
ジュン:あ、ルースも居たんだね。こんな時間に出歩いてるだなんて珍しい~
リノーツ:で、お前さ、本落とさなかった?ほらこれ。
ジュン:あー!僕、これ探してたんですよー!さっき返却期限が迫ってる本をまとめて図書室に返しに行ったんですけど、なぜかこの本だけ無くなってて・・色々寄り道してる途中で落としちゃったんですね、見つかってよかった・・
リノーツ:あー、すれ違っちゃったみたいだね。ごめん、余計なお世話だった?
ジュン:いえいえ!届けて来てくれてありがとうございます!
ルース:ジュン、おれの時と態度違くない?おれも年上なのに敬語使ってくれないの?
ジュン:敬う要素が無いだろお前は!!リノーツさんは僕が一番尊敬するデストロイヤーだから!お前みたいなサボり魔は眼中に無いわけ!
ルース:ええー?
リノーツ:へえ、よくわかってんじゃん。その本のタイトル、『リアルドールと紅の破壊者』だっけ?大分古くなってるね。

ラブドール

ジュン:あー大分前に発行されたものらしいので、少し傷んでますよね~
リノーツ:この本に出てくる紅の破壊者さんってエリーに似てない?
ジュン:ええ?それ、髪色だけで判断してませんか?僕がこの絵本を借りたのはですね、あこがれのデストロイヤーを脳に刷り込むためなんです!戦争末期に大活躍したとされる伝説のデストロイヤー!少し刃を振りかざしただけで、ドールが木っ端みじんになる絶大な力!赤く光る刃が太陽に反射し、ドールを委縮させていく最恐最悪のオーラー・・
リノーツ:それ、おとぎ話だからあんまり本気にしない方が良いよ。実際のデストロイヤーはそんなもんじゃないし。
ジュン:まあ、そうなんですけどねー!僕はあなたに憧れてますから!将来はリノーツさんみたいな優秀なデストロイヤーになるんです!
リノーツ:それはどうも。
同僚A:いたいた、ジュン君!部屋に戻ろう!僕たちはとっくに寝る準備終わってるよ!
ジュン:あ、ごめんごめん今行く!
リノーツ:呼ばれてるね。さっさと寝なよ、夜更かしは成長期の敵でしょ?
ジュン:わかってますー!リノーツさんはこれからお仕事ですよね?頑張ってくださいね、僕応援してますから!
リノーツ:はいはい。
ルース:んー・・ジュンも可哀想だよねー、頑張っても絶対にデストロイヤーになんてなれな。
リノーツ:は?
ルース:あっ、ごめんね。
リノーツ:ほら、お前の部屋に行くよ、俺に何か用があるんでしょ?
ルース:あ、うん!じゃあ行こー!
2人はルースの部屋に入りました。

ラブドール

リノーツ:で、何?用って

ルース:んふふ・・はい、どうぞ!これ、リノにプレゼント!
リノーツ:は?お前が、俺に?ルース、何か変なもんでも食べた?
ルース:もー!失礼なー!良いから開けてみて!
リノーツ:これ、ネックレス?
ルース:日頃の感謝ってやつだよ~!これねえ、今日の午前中にお姉さんと一緒に選びに行ったんだ!お店で一番きれいなのを選んだから!リノの瞳と同じ色!
リノーツ:これ、お前が買ったの?
ルース:そう!ちゃんと自分のお金だよ、いつもみたいにお姉さんに買ってもらうわけにはいかないから!
リノーツ:へえ・・なるほど、今日の午前お前が仕事を放りだしたのはそういうこと・・それでお前が珍しく今まで熱心に仕事をしてたのはそういうことね・・お金のためってことね。俗な理由。
ルース:もーいいから!ほら付けてみて!
リノーツさんネックタイを付けました。
つづく・・・

リアルドールと紅の破壊者ー第13回

2人は会長室に出た。
リノーツ:あ~北棟の自室に戻ってる可能性も無くはないけど・・
ルース:まだ全て部屋回ってないし、もう少しこの辺りを探そ~!
リノーツ:うん、時間がかかるけど・・・仕方ないか。
エリーの部屋前に来た。
ルース:リノ、リノリノ!エリーの部屋の扉開いてるよ!
リノーツ:え、嘘!?閉め忘れたのかなあ。珍しい、エリーは普段部屋に人を入れないし、鍵の管理もしっかりしてるはずなのに・・
ルース:リノはエリーの部屋に入ったことあるの?
リノーツ:まあ、業務連絡で数回だけ、でも中を詳しく見たことはないかな・・
ルース:おれ、入ったことなーい!少し覗いてみよっか?
リノーツ:うん、少しだけね
2人はエリーの部屋に入った。

ラブドール

リノーツ:あー、やっぱりグチャグチャだなあ。
ルース:えー、すごいすごい!秘密基地みたい!作りかけの服がある。もしかしてこれ、エリーが作ってるの!?
リノーツ:そうらしいね。お前の仕事着とか他のメンバーの服も大体こいつが作ってる。服飾が趣味なんだって。
ルース:へ~!知らなかった!わー!このクマちゃん可愛いー!エリーこんなのも持ってたんだ!良いなーおれも欲しいなー
リノーツ:そんなの何に使うの?サンドバッグ?
ルース:添い寝するんだよ!?発想が過激だよ、リノは~
リノーツ:アイツがここを使うはずはないし、中は物置きになってそう。
ルース:あっこれミシンだー!すごーい、高そう!
リノーツ:おい、あんまり触るなよ!壊したらどうすんの!
ルース:大丈夫大丈夫!見て見てリノ、宝石が嵌まってるよ!キラキラしてて綺麗だね、あ、取り外してできそう・・

ラブドール

リノーツ:ストップ、その宝石は飾じゃないから取るなよ。大切な動力源だからね。
ルース:・・?動力源?あーえっと、宝石がなんちゃらで大事にされてるんだっけ?おれ、あんまり知らなくて・・
リノーツ:まあ、学校に通ってなかったのなら、知らないも同然か。今はこの、宝石が主な物の動力なんだよね。宝石に含まれてるエネルギーが物を動かすんだよ。水力や火力で作られたエネルギーとは別格で、宝石の出現は人間の暮らしに大きく影響を与えたって聞くよ。不思議な力なんだよねえ。重力に逆らって物を動かすこともできるし使い方によっては色々なことができる。ほら、飛行船とかもそうでしょ?アレも浮いて人を運んでるし移動手段としてメジャーだよね。
ルース:あー確かに!あ、リアルドールも宝石の力で動いてたよね!そんなに昔から宝石は使われてたの?
リノーツ:いや、ドールの時代に宝石は使われてないよ。
ルース:・・・?どういうこと?

ラブドール

リノーツ:一般的な動力として使われ始めたのはごく最近10年くらい前から。ドールには必ず宝石が付いていて、それによってドールが動くことは知られていたんだけど。その宝石が一般的な動力として利用価値があるって当時は誰も気が付かなかったみたいなんだよねえ。一般の動力として使うことには製造の際に何かひと手間を加えないといけないらしくて・・?知らないけど。ほら、ドールの製造工程に関しては長年企業秘密だったらしいから・・一般動力としての可用性を一般市民が分かるわけがないんだよね。なんでそんな大切なことを企業側がずっと黙っていたのかは知らないけどさあ。まあ、だから戦争が終わって宝石自身がエネルギーを作れるってわかった今じゃ、今まで補助の役割として使ってきたドールの代替品として、宝石を核にしたものが使われてるんだよ。
ルース:へええ!ごめん、半分くらいわかんなかった・・
リノーツ:ただ一つの役割しか無いと思われていた物体が、実はあまりある役割を持つすごいものでした。みたいな認識で良いよ。
ルース:それにしてもリノすっごい知識あるね?リノもおれと同じで学校に行けてなかったって聞いたこともあるけど・・
リノーツ:そうだよ。学校に行ってなかったんだから少しくらい勉強しないとね。オレも新人の時に最低限の物事は叩き込まれたけど・・流石にそれだけじゃ足りないから。最近はちょくちょく参考書や他の本を読んだりして知識を増やしてるんだよ。一応義務教育の範囲内だし、知識の差で去年入った新人のガキにマウント取られたくないからさあ・・
ルース:へー!リノえらーい!
リノーツ:本当はお前も一緒に勉強した方が良いんだけど。今度一緒に図書室で勉強する?
ルース:やだ!気が向いたらね!
リノーツ:クソガキが・・
ルース:あ、見て!何かある!
リノーツ:んー、高そうな箱だなあ・・いかにも怪しい感じ
ルース:鍵がかかってる・・何か入力しなきゃいけないのかな?
欲深く、罪深いその者の名を決して忘れてはならない。
リノーツ:・・?
ルース:え、何これなぞなぞ!?ねえねえリノ、この箱開けてみようよー!
リノーツ:いや流石にそれは・・人様の物を勝手に触るのはどうなの
ルース:でも気になるでしょ?
リノーツ:超気になる。
ルース:だよね!
箱のカギには5文字をアルファベットを入力する必要があります。
机の上にのメモ―からEllieを推測して箱を開けました。
ルース:あ、開いた!
リノーツ:E,l,l,i,e゛エリー”、ね。アイツ、自分の名前を暗号にしてるんだ?へえ・・

ラブドール

ルース:中に入ってるのは~ペンダント?綺麗だね~
リノーツ:これ、オレがエリーに持っていくよ。
ルース:え、勝手に持ち出して大丈夫なの?
リノーツ:一応、必要になるかもしれないし。怒られたらその時はその時でいいよ。
エリーのペンダントを入手しました。

つづく・・・

リアルドールと紅の破壊者ー第12回

リノーツ:何この絵・・・ああそれ、ルースさんが私に描いてくれたんですよ。私がにっこり笑ってピースしてる絵です。なかなか良いでしょう?狂者の絵かと思ったよ
医者:ああそうだ、ボディ用の傷隠しシール、入荷してますよ。使いますか?
リノーツ:あ、使う使う。そろそろ在庫が無くなってきてたんだよねえ、いつもありがと。
医者:古傷には有効に使えますし良いですよね。じゃあ後で部屋に送っておきますね。エリーさんもこういう類のものを使うんですよね、たまに取りに来ますよ。
リノーツ:え、そうなの?変なの
リノーツ:よし、これを救急セット補充しよう。
医者:リノーツさんはこれからお仕事ですか?明日から休みが取れるんだと嬉しそうに話していましたのに。
リノーツ:ほんっとそうなんだよねえ。エリーの応援に行けってさ。今日はあのクソガキの仕事までやって疲れてるっていうのに、あのガキ、最近はよく仕事をするようになったし、しっかりしてきたと思ったんだけどなあ?
医者:ああ、ルースさんですか・・大変ですね、リノーツさんも。休養はしっかりとってくださいね。

ラブドール

リノーツ:そうしたいのはやまやまなんだけどねえ~これもオレの仕事なら、きちんと果たすよ。よし、これでオッケー。じゃあごめんね、お邪魔しちゃって。もう行くから。
医者:あ、待ってください。エリーさんのことなんですけど。。
リノーツ:あいつがどうかした?
医者:ええ、その・・・彼、最近医務室に来ないんですよね。いくら彼が丈夫と言えども、心配なのでたまにはここに顔を出すよう彼に言ってもらえませんか?
リノーツ:マジ? あいつ来てないんだ。わかった、言っておくよ。
医者:よろしくお願いしますね。では、気をつけていってらっしゃい。
リノーツ:うん、お前も頑張って・・さて、準備も整ったし行こうかな。あいつと話してたら落着いてきたな・・現状を受け入れられそうかも。うん、これはオレの仕事だ。エントランスホールに向かおう。ああ、そうだ、行く前に場所の確認もしないとね。えーと。
あー!!!!
!!!

ラブドール

ルース:リノ!リノ!リノ~!
リノーツ:うわ出た、ルース!
ルース:やっほーリノ!これからどっか行くの?
リノーツ:行くけど・・あ、もう、せっかくこれをオレの仕事だって受け入れてきたのに、お前の顔を見たらイライラしてきた!
ルース:えっなんで!?オレのせいにしないでよー!
リノーツ:オレのストレス全般お前のせいなんだよ、このクソガキが!!
ルース:も~~リノ、外行きの服だね?これからどこに行くの?もう夜だよ?
リノーツ:ああ、仕事だよ、急遽エリーの応援に。この服着てたらそれ以外無くない?
ルース:ふ~ん?
リノーツ:お前が今日午前中に女と遊びに行った分、オレがお前の仕事を代わりにやってあげたんだけど?仕事を放棄することを当たり前だと思うな、このクズ。ちゃんと働け!エリーもスースもオレにばかり仕事を回してきてさあ・・人の負担が尋常じゃなくない?
ルース:へえ、大変だね!リノ?
リノーツ:他人事みたいに言うなよ。この元凶が!!ほんっと信じらんない、お前もデストロイヤーだろうが!大人の一員だ、それなのにお前は毎日毎日女と遊んで
ルース:お姉さんはやさしいから好きだよー?
リノーツ:ああ、その「お姉さん」もお前のキレイな顔に釣られた。気の毒な人だよ!お前のこのクズっぶりを見たら幻滅するだろうね、心底!ああでも「お姉さん」たちは素のこいつと喜んで付き合ってるんだけ。うわあ、どこもだめだなあ。なんでこんなガキっぽいやつと?こんな奴、顔が良いだけの子供なのに。

ラブドール

ルース:リノ、オレを子供扱いしたり大人に見たり、混乱するからどっちかにしてよ~
リノーツ:お前自身がバラバラなのがいけないんだろう!?
ルース:も~、そんな怖い顔しないで!怒ってばっかりだと、しわが顔に貼り付いちゃうよ?笑った方が良いよー!
リノーツ:誰のせいだと・・!?って、あんまり長話もしてられないんだよ。俺はもう行くから。ルース、俺に何か用だった?
ルース:あ、えっとね、用はあるんだ!ちょっと付き合ってほうしいの!
リノーツ:はあ?今から?誘うにしても時と場合を考えてよ。俺が今から出かける格好してるの見えてるんでしょ?
ルース:ダメ?
リノーツ:あー。まあ、別にいいよ。急用?
ルース:いや別に!
リノーツ:は?ならなんで今頼んだんだよ・・
ルース:いーじゃんもうオッケー貰ったもん!俺の部屋に行こう!!
リノーツ:わかったよ。少しくらいなら、寄り道しても良いかもね。
ルースはチームに入りました。

ラブドール

リノーツ:用件は今話してくれた方がありがたいんだけど・・
ルース:やだ!オレの部屋に行ってからね!あれ?何か落ちてるね。何これ、本が落ちてるよ。誰かの落とし物かな?図書室に戻そっか?
リノーツ:いや待って。えーっと今これを借りてる奴は・・ジュンだね。まだ返却手続きもしてないみたいだし本人に返してあげれば?
ルース:あ、おれが返す流れなの?リノも一緒に行こうよ!少し寄り道していこう!
リノーツ:わかったよ。やることリストが増えたな・・・
落とし物、入手しました。

ラブドール

どこに居るかな・・
会長室に来ました。
ルース:やっほー会長~!
会長:おや、ルース君にリノーツ君。こんばんは。リノーツ君は・・まだ出発していないなんて珍しいね。どうしたのかな?
リノーツ:う、ああ・・申し訳ありません、会長。少し、野暮用がありまして。いえ、これを終わらせたらすぐにでも出発するんですが・・・
会長:ああ、大丈夫だよ、急かしているわけじゃないからね。ゆっくり出発するといい。
リノーツ:はい。
ルース:それで、会長!ジュン知らない?
リノーツ:ああ、野暮用というのはそのことで。少しばかり、彼女を探しているんです。
会長:ふむ、ジュン君か、私はずっとこの部屋にいるから、見ていないなあ。力になれなくてすまないね。
リノーツ:そうですよね。すみません、お時間を取らせてしまって
会長:とんでもない。また何かあったら来るといいよ。
リノーツ:寛大なお心、感謝いたします。
ルース:会長、ありがとー!

リアルドールと紅の破壊者ー第11回

 

2人は部屋を一回に回しました。
エリー:なあ、リズ・・これで全部の部屋は回ったんじゃないか?俺には、お前の言う主人の形見なんて、無かったように見えたんだが。
リズ:そ、捜索が甘かったのかもしれません!もう少しだけ、調べさせてください。例えば旦那様の部屋とか、もう少しだけ!
エリー:そうだな、もう少し見て回ろうか
エリーは一階部屋の植木鉢の前に着きました。
エリー:?なんだ、机の中に何か。

ラブドール

引き出しの奥には手紙が入っていた。
エリー:!リズはまだこれを見つけてないんだよな・・!?手紙、これはもしてかして、ああ、やっぱりこれは、主人からリズへ向けた手紙だ。これは、きっと彼女は、主人の形見として認識してしまう。これを彼女に渡したら終わってしまう。俺らの関係が、俺たちの時間が・・嫌だなあ、それは、ああ、本当に、契約というものは厄介だ。こんなに清らかで優しい彼女を破壊しなければならないなんて記憶のないドールは破壊するしかない。だが、記憶があったのなら?そうしたら俺は、彼女を破壊しなくて済むのに。彼女とまだ一緒に居られるのに。この手紙は隠しておこう。増援が来る。期限ギリギリまで。そういえば、定時連絡の規定時間、とっくに過ぎてるな。連絡機器の電源を切ってるからあちらからは俺に連絡はできない。そろそろ、不審に思う頃か。増援が来たら、彼女は、彼女は少しばかり記憶を取り戻してきているみたいだが、それは保護の対象外の記憶だ。記憶を全て取り戻すのは極稀で、そんなリアルドールは数えるほどしか居ないことはわかっている。俺自身も、深く理解している。それでも、どうか、どうか。
彼女の記憶が、全て戻りますように・・

ラブドール

秘書:リノーツさん、リノーツさん、いらっしゃいますか?
リノーツ:・・・?どうしたの、何かあった?
秘書:こんばんは。会長がリノーツさんをお呼びですよ。
リノーツ:うわ、マジ?こんな夜に?絶対良い話じゃないって秘書くん、オレ行きたくない。悪いけど君が代わりに行ってきてくれない?
秘書:ダメですよ!会長は本人をお望みです。急用とのことなので。急いだ方が良いですよ!
リノーツ:わかったよ!
リノーツ:ただいま、リノーツが来ました。お呼びですか、会長。
会長:ああ、リノーツ君。すまないね、こんな夜更けに呼びだしてしまって
リノーツ:いえ、大丈夫です。
会長:それで、用件なんだけれど、今、課外任務に行っているエリー君の定時連絡がないんだ。少し前に突然連絡を寄越したきり、規定の時間になっても連絡が来なくて・・もしかしたら、何か問題があったのかもしれない。まあ、そんなに嫌そうな顔をしないでくれ。優秀な君に応援を頼みたい。良いかな?
リノーツ:分かりました。
会長:悪いね、君の予定も顧みず・・でも深刻な問題なら、エリー君が心配だ。よろしく頼むよ。
リノーツ:いえ、問題ありません、このリノーツにお任せください。
会長:ありがとう。どうかこのルブルムソール協会のために、尽力してほしい。
リノーツ:もちろんです。
リノーツは事務室から出た。

ラブドール

リノーツ:ああ、もう、あいつ、何俺に面倒事をふっかけて来てんだよ。最ッ悪、あのくそエリーめ・・あいつの尻拭いもフォローもぜーんぶ直属の上司であるオレの役目だよ!!ふざけんなよなあいつ、なんでオレの仕事を増やすかなあ!?ああもう、明日からオレは連休だったはずなのに、のんびり過ごす予定だったのに。ほんと最悪、今度エリーに埋め合わせしてもらわなきゃ収まらない!何か問題があったとしてもオレの休日を潰すなんて最低な罪!まあオレの仕事になったからにはきちんと役目を果たしてみせるけどさあ。はあ、出る準備をしなきゃ。オレの部屋に戻ろう。

掲示板の前に来た。
デストロイヤーに向けての連絡事項が記されている。破壊したドールの痕跡は残されないようにすること。破壊した宝石は全て持ち帰ること。

リノーツ:出発する準備をしよう・・・まずは着せ替えちゃおうかな。そしたら身だしなみをチェックして・・ああそれと武器も持って行かないと。さっさと着替えました。よし、身だしなみはオッケー。襟元が曲がってちゃ格好が付かないからねえ。必要なものはこれと、これと・・・ああそれと、救急セットも必要かな。というか、ドール破壊の仕事で問題なんて、ドールの反撃しか思いつかないんだけど・・あいつは自分で治療できる奴なのに・・そんなに大きく怪我を負わされたの?俺らデストロイヤーの仕事は発信機に反応があった近辺の調査・情報集め、ドール破壊だ。ドール破壊はドールの反撃によって負傷するリスクがある危険な仕事だから、俺ら成人の男に任されてる訳だけど。やっぱりあいつ、自分で治せない。大怪我でもしたのかなあ。あれ、この救急セット・・包帯が足りてないな。オレのせいか。はあ、仕方ない・・取りに行こう。確か医務室にあったよね。
医務室に入った。

ラブドール

リノーツ:やっほーヤブ医者。ここの包帯持ってっても良い?
医者:どうぞ、ご自由に。
リノーツ:どうもね。
医者:あ、それとリノーツさん。少しこっちに来てくれませんか?
リノーツ:・・?分かった。それで、何?
医者:右腕の傷、どうですか?治ってきましたか?リノーツさんにしては深手の傷ですから、私心配で。
リノーツ:あー、まあ、ぼちぼちね。
リノーツさんはしっかりしてるように見えて生傷が絶えないですからね。では腕の包帯を取り換えましょうか、そこに座って
リノーツ:いやいい。少し前に取り換えたばっかりだし。
医者:そうですか。他の傷はどうですか?
リノーツ:まあまあ治ってきてるよ。跡にはなってるけど、隠せば問題ないし。
医者:そうですか。もう本当に、気を付けてくださいね。自身を投げ打ってまで、仕事をする必要は無いんじゃないですか?いつか本当に、身を滅ぼしますよ。
リノーツ:ご忠告どうも。この傷はオレがしっかり仕事を完遂した証だよ。仕方ないって、ドール破壊に怪我は付き物なんだからさ。
医者:まあそうなんですけどねえ・・その怪我、私以外の人に言ったんですか?
リノーツ:言ってない。あんまり心配かけるのも良くないでしょ。
医者:そうですか・・

つづく・・・

リアルドールと紅の破壊者ー第十回

前回に続いて・・リズまた旦那様のこと思い出した。

リズ:私、あなたと一緒に居られて、本当に楽しいです。私はあなたに救われました。何か、恩返しをしたいと思っているんですけど・・
アルバートふふ、その必要は無いよ。お礼を言いたいのはこっちなんだからね。僕のことを受け入れてくれて、一緒に居てくれてそれだけで、本当に幸せなんだ。君は優しい。その心を、僕だけではなく、誰かのために使ってくれないかい?君の救いを待ってる人がきっと居るよ。
リズ:き、機会があればそうしたいとは考えていますが・・でも、私、分からないんです。そういう人になんと声をかければ良いか・・だってその人たちは、ずっと自身で悩みを抱えて来ているんでしょう?しゃしゃり出てきた他人の言葉なんて、むしろ迷惑ではないですか?

ラブドール

アルバート君は大胆な子ではあるけれど、少し考えすぎる癖があるね。大丈夫、気を楽にしてごらん。僕だって、君に救われている。人というものはね、自分へ向けられる・・好意のこもった言葉に救われるんだよ。多少強引でも、言葉にすることに意味がある。僕もね、君の存在で、言葉で、毎日が花のあるような日々になったんだ。改めてお礼を言うよ。ありがとう、リズ。
リズ:ああ、いえ、お礼を言われるようなことは何もしていませんよ。私も、あなたのとこは愛していますからね。
アルバートふふ、そんな感じだよ。僕のことも毎日褒めてくれるし、笑いかけてくれるだろう?そうやって接してくれるのが一番だ。
リズ:え?そ、そうなんですか?それだけで良いんですか?あなたは私の言葉で、救われているんですか?
アルバート:そうだよ、リズ。君が思った通りに、したいようにすれば良いんだ。君がそれができる。だから安心していい。君は優しくて行動力のある。魅力的な女性なんだから。

また、リズの思いは現実に戻った。

ラブドール

リズ:私にも、この人を救えるのでしょうか。エリーさん、そんなことはありませんよ。エリーさんはあまり自分のことを言わないので、突然のことで少し驚いちゃいましたが・・可愛いものがお好みなんて素敵な趣味です。自分を可愛く着飾るのも、良いんじゃありませんか?

エリー:だから、俺は自分の容姿が嫌いで、そんなこと、許されな・・
リズ:許します!!あなたが許さなくても私が許すから良いんですよ!問題ありません!
エリー:そんなむちゃくちゃな・・
リズ:好きなものに囲まれると心が落着きますよね。あなたが自分のことを嫌いでも、これだけは忘れないでください。好きなものはあなたを否定していないんですよ。ずっと、あなたを見守っています。エリーさん、私、可愛いですよね!?
エリー:え?あ、ああ
リズ:好きですよね!?私のことが!
エリー:まあ・・
リズ:なら良いじゃありませんか!私が言ってるんですよ、あなたのことを許すって!

ラブドール

エリー:リズ、言ってることがめちゃくちゃだぞ。
リズ:それでも!良いですよ、エリーさん!エリーさんはエリーさんじゃないですか!私の前では自分を否定せず、好きなものは好きでいて・・胸を張って生きていて良いんですよ!
エリー:なんだそれ、本当に筋が通ってない。俺は自分の容姿が嫌いなんだって言ってるだろ。自分の問題だ。人がどう思うかなんて関係は無い。でも、少しだけ、救われた気がするよ。ありがとな、リズ。
リズ:ああそれと、あと一つ、いいですか?
エリー:今度はなんだ。
リズ:エリーさん、その赤髪とても素敵ですね。
エリー:・・!

ラブドール

リズ:あなたが眠っている間に少しだけ触らせてもらいました。ふわふわしていてツヤもあって毎日手入れをしているんでしょう?その髪、エリーさんによく似合っていますよ。
エリー:俺も、自分の髪はまだ、好きなんだ。癖毛ではあるんだが、この色もお気に入りで、だから毎日欠かさずに・・ああ悪い、本当に、久しぶりだ、こんな褒めてもらえるなんて・・ありがとう、リズ。本当に、嬉しい。
リズ:ふふ・・
エリー:どうして、お前はこうも・・ああ、やっぱり。俺に、こんなに優しくしてくれるドールは初めてだ。他のドールは、俺がデストロイヤーだとわかればすぐに怯え、俺を非難する。何故だかリアルドールは記憶が無くても、デストロイヤーへの恐怖の感情は残っているようで・・これが仕事と言っても・・罵声を浴びせられ、恨みのこもった目で見られるのは良い気分じゃない。ああ、まずいな。こんな感情を抱いてしまうからドールとの過度な接触はNGと言われていたのに・・少し、判断を間違えたのかもしれない。でも、それでも、できればもう少しだけ彼女と一緒に居たい。まだ、終わりにしたくはないな。