リアルドールと紅の破壊者ー第一回

ここは、人間と人形が共に暮らす世界。ある日、ある者が人間の補助をするドールと呼ばれる人形を開発した。それが公に発表されるとそれらは世界中で脚光を浴びるようになった。犬猫型やその他の小動物型など、様々な種類のドールが開発されたが、人々の注目は主にリアルドールに集められた。

ラブドール

 機械ではない、不思議に動き自我を持つ物体、ドール。本物の人間のような精巧な外見。本物の人間のように考え、思考する頭。半永久的に不死である彼らは人間にとって魅力的なものだった。実用化されるとそれは瞬く間に民衆に広がり、人々はドールを購入し、自分たちの利便品として受け入れた。その用途は子供の遊び相手、仕事の補佐、一人暮らしの補助など多様に渡る。そんな人間と人形が共存する時代は何百年も続き、ドールは主人に身を捧げながら彼らと平和に暮らしていた。あの時までは・・・

旦那:ああ、リズ、リズ・・・聞こえているかい?すまない、リズ・・・本当にすまない。僕はね、君が誰であっても・・・君に何があっても・・・ずっと君を・・・
リズ:ここは、どこですか?・・・私、この棺の中に入っていたんですよね。どうして・・・も、もしかして私、死んでしまった・・・?いえ!そんなことはないですよね、現に私は動けてますし!ものに触れますし!そもそもドールですしね。死ぬことはあり得ません!でも、どうしましょう。何もわかりません。どうして私はこんなところにいるんでしょう・・・起きたばかりで混乱しているのでしょうか、頭がぼーとします。と、とりあえず外に出ましょう!ここから出れば何かわかるかもしれません!く、暗くてあまり見えないですが・・・手探りで出口を探しましょう。

ラブドール


 よし、出れました・・・良かった、明るくて安心できます・・・えっ、ここはどうしてこんなに荒れ果てているんですか?なぜ私はここに・・・ここは、私はどうなってしまったのでしょうか。何も思い出せません。とりあえず、歩いてみましょう。夕暮れ時ですね。何だか、不安になってきます。

 ここ、誰かの部屋?棚に写真が掛けられている。男性と自分の姿が映っている。裏には「Albert and Liz」と書かれている。これは、旦那さまと私の・・そうだ、私はリズ・・一人暮らしの旦那様のメイドをしているのでした。ここは私の住む家です。でもどうしてこんなに荒れ果てているのでしょう。旦那様は、どこへ行ってしまわれたのでしょうか。あれ、この写真、何か違うような・・

ラブドール

 髪飾りです!今、私髪飾りを付けていません!さ、探さなければ、ここは私の部屋ですから、どこかにあるはずです。ああ、ありました!よかった。私の髪飾り、これは旦那様が私にくれたものですから、大切にしなくては・・ふふ、完璧です!

 ?何か落ちています。あ、これ、私の手帳ですね。何か書いてあればいいんですけど、え?ほとんどのページは黒く塗りつぶされていて、読むことができない。どうして・・あ、最後のページだけ読めます。黒い染みに紛れ、乱雑な文字で何かが書かれている。
「逃げて、逃げてくれ、もうそこまで来ている。すまない、どうか、逃げてくれ。」旦那様の筆跡、これ私に向けて?

ラブドール

 植木鉢、本物に見えるが、よく見たら造花のようだ。それにしても、本当に旦那様は一体どこへ?こんなによく分からない状況ですし、もしかしたらどこかで危険な目に遭っているかもしれません。旦那様を、探しにいきましょう!

ラブドール


 っ!扉をたたく音、お客様でしょうか。こんな時にどなたでしょう。とりあえず、迎え入れなくては。玄関に向かいましょう。こちらからは行けません。2階から回って行きましょうか!
遅れてすみません、今開けます!
っ!                   つづく・・・・