リアルドールと紅の破壊者ー第八回

前回に続いて

エリー:まあまあ時間が経ったな・・リズ、疲れてないか?疲労を感じるなら休憩を挟むが
リズ:大丈夫です!私も早く旦那様の形見を見つけたいですし、もう少し頑張りますよ!
エリー:そうか、頑張ろうな。
リズ:そういえば、エリーさんはどうしてデストロイヤーになったんですか?
エリー:どうして、か
リズ:あ、いや、そのエリーさん、その仕事が好きではないみたいですから、不思議だなあ、と。すみません、踏み込み過ぎましたかね。
エリー:ふ、そんなに慌てなくても、デストロイヤーになった理由は正直覚えていない。だが、それでも俺がこの仕事を続けるのは・・そうだな、自己の存在確認のため、とかかな。
リズ:存在確認?

ラブドール

エリー:ずっと生きていると自分が何者なのか、なぜここにいるのかが分からなくなってしまうだろ。この仕事をしているのはただ、これが俺にとって一番都合が良かっただけなんだ、多分。
リズ:多分?
エリー:悪い、あまり答えになっていなくて正直その辺は俺もほったらかしてるからよくわからないんだ。慣性を保ってギリギリで生きてる感じ。仕事をしてるやつなんか大体そうなんじゃないか?
リズ:え?そんなんですかね?
エリー:お前はどうなんだ?メイドとしてこの家で働いて。満足してるか?あ、でもリズは環境が全く違うから比較はできないな。お前、かなりこの家の主人に愛されてるだろう?
リズ:ふふ、そうですね、旦那様が優しいからこの仕事も楽しくできた。というところはあると思います。すみません、私もよく覚えていないので、曖昧なんですが、でも、満足はしていましたよ
エリー:そうか。そうだよな。仕事には満足していた方が良いよ。長く話し過ぎたな。そろそろ別のところにも行くか。
リズ:はい!

ラブドール

エリー:大体の部屋は見て回ったな。そろそろ2階の開かない部屋に行こうか
リズ:はい!
2人は書斎の前に行きました!
リズ:やっぱり開きませんね。エリーさんに頼んでみましょう。エリーさん、お願いします!
エリー:ああ。
エリーはドアを開けました。
リズ:ありがとうございます!
エリー:いいえ。

2人は棚の前に来た。

奥に何かある。「ドール購入時の注意点」という冊子が挟まっている。
エリー:・・

ラブドール

 

ドールは「人間の補助」を役割としています。用途に応じてドールを教育してください。その際、ドールにはあらかじめ自身はあくまで人間の補助目的の人形だと伝えてありますので、容易に取り扱いができるようになっています。ドールには自我がある故、何か問題が発生する場合がございます。基本的には主人に従属しますが、万が一反抗的な場合はXXへ連絡してください。調教した上、送り返します。連絡先は・・・その後はペンで塗りつぶされたようで読むことができない。ページの下に、乱雑な文字で「彼女は生きている」と書かれている。
エリー:・・・。生きている、ね。ドールは人工的に作られたものだ。だが彼らには人間のように自我がある。だから利便的に、当たり前のように、彼らに「生きている」という言葉を使うが・・本当に、大した言葉じゃないのにな。
エリー:うーん、ここは啓発書ばかりだな、収穫はなさそうだ。
リズ:何を探していたんですか?
エリー:史書、文化資料になるから一応探しておこうと思って
リズ:ああ、なるほど・・
エリー:ん?

ラブドール

目の前の棚に隅には、小説が入っている。
エリー:あれ、珍しい、他の棚には啓発書ばかり入っていたのに。これ、リズのか?
リズ:あ!そうです!私の部屋にはもう入らないので、入れてもらっていたんでしたね。私も本はたまにしか読みませんが、小説は良いですよね。作り物だからこそ、フィクションだからこそ、その世界観に浸れるというか
エリー:作り物、リアルドールに自我があるのはもう当たり前として受け入れられているが。そもそもどうして自我があるんだろうな?ドールは人工的に作られたものだって言うのに。動物ではないのに、不思議だよな。なあ、お前は考えたことがあるか?自分の存在が、作り物なんだって。自分の感情が、行動が、全て作られた物、ふとした時に、自分の存在が消えそうな。そんな感覚に陥ったことはないか?
リズ:え・・うーん・・あまり考えたことは無いですね。多分、一人だったらそんな考えが浮かぶんでしょうけれど、私は旦那様と一緒でしたから。楽しい記憶しかまだ思い出していませんから、あまり上手くは言えないんですけど、作り物でもね、楽しかったり、嬉しかったりする感情に嘘はないと思いますよ。すみません、あまり答えになってないですね。今でも、隣にはエリーさんが居ますからね。人が居れば私は大丈夫なんですよ。
エリー:そうか、お前はそうだよな。悪い、変なことを訊いた。少しばかり、感傷的になってしまったみたいだ。
リズ:ああいえ!良いんですよ。