古い自販機と謎のマネキン人形の話

 学生時代、夜中にコンビニに飯を買いに行く途中。カラカラ音がしていた。なぜか妙に気になり、目をやると駐車場だったので、エンジンを切った直後の車だろうなどと思ってそのままコンビニに向かったんだ。立ちよみした弁当を買い、来た道を戻って先程の駐車場に差し掛かると、真ん中から音がしている。あれと思った。

ラブドール

 その日は金曜日だったのと前日にコンビニによってなかった。よむものが多かったんだ。立ち読みだけでも20分じゃくはかかっている。車なら、とっくに音はならないはずじゃって思って夜駐車場の方を見ると、数台止まってはいるけど、音の出る方に車ではなく、ぼろい自動販売機があった。

 明かりがついているからか、どうわしているんからけど、取り出し付近まで雑草は生い茂ていてこれ、まだ動いたんの?てレベルの自販機。こんなとこに自販だったかなとか思いながら近寄ってあと数メートルでのところで、音はその自販機ではなく、更に右側あたりになっていることに気がついた。そっちに目をやると、これまた、ぼろチン放棄自転車があった。前輪部分は自販機の雑草と一体化していてペダル辺りにもツタのように草が絡みついていた。溝でもあるのか微妙に前の見になって後輪部分が浮いている。暗かったんだけど、自販の明かりのおかげでよく見えた。ここでやっと音の正体がこの自転車の後輪が回っているからだと気づいたんだ。特に、風が吹いているわけでもないし、誰かが漕いでるわけでもない。そもそも雑草が絡まっているから、漕げるわけがない。なのに、ずっと回り続けている。

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 おかしいはずなのに、その時は回っている不思議より音の正体を掴んだ充実感が勝っていたと温めてもらっていた弁当が冷めるほうがいやだったので、さっさと帰ろうと思い、駐車場を出ようとした時妙な違和感がここジャリだったけとその駐車場は自宅とコンビニへ行くルートの1つにある住宅路に面したよこに長いアパートの離れの駐車場。よく通る道の脇にあったでなんでも目にしているが、セメントで整備されてたはずなんだけど、その時は少量のチャリと土建ての駐車場だった。まあ、よくある記憶違いかな。って思ってその日はそのまま帰宅した。

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 それから、二か月ちょっと経ったあと、自宅で友人たちと飲んでいた時、買い出しに行った一人が戻ってきてから変なことを言い始めた。自販機の前にマネキンのようなものが立っている。それを聞いた直後は同じアパートに美容師系の学生がいたせいもあり、ゴミ置き場にマネキンの頭部が大量に置かれてたことがなんどかあったので、いたずらだろうなどと思った。その地区は夜中にゴミ収取があるため、零時までに出すのだが、たまに置いてあって結構ビビる。置き方的にも多分確信犯。でもすこし話を聞いていると、ゴミ置き場近くの自販機ではなく、いたずらするには少し遠い。例の駐車場の自販機のことだった。そいつがいうにはコンビニに向かう途中、駐車所の自販機と向かい合う形で人形のようなものが立っていてコンビニから戻る時も変わらず立っていたから遠目に覗いたら、白くて太いマネキンのようなもので、微動ばにしなかったとその話を聞きながら、奇妙だと思った。忘れていたわけでもないのに、この二か月間、同じ場所を何度も通っているのにもかかわらず、なぜかあの日の出来事をまったく気にとめなかったし、記憶をたどってみてもあの時の光景と一致する場所ではないはず。加えてこの話は誰にもしていなかったので、買い出しに行ったやつは知らない。とはいえ、その話をするのも後だしみたいで笑われそうだったから、お前飲みすぎだよとか笑って誤魔化してたら、そのうち全員で見に行こうぜって話になった。変な奴のいたずらかもとか危険かもしれないから、武器を持っていくかみたいなくだらないやり取りをしてやろう五人で駐車場に向かった。

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 で、着いた先に買い出しに行ったやつがあれとかここじゃないと返り出しました。もっと古い駐車場で、もっと水ぼらしい場所だったと奥に自販機があってそこにマネキンが立っていたんだと。結局飲みすぎだとか、酔ってんじゃねえよ作り話四つとか話しながら戻り、明けがたあたりまで飲んで寝て昼過ぎごろに解散した。みんなが帰ったあと、一人例の駐車場に向かったが、そこには何度も見たいつものごきれいな駐車場があるだけで、自転車もチャリもなく、そもそもぼろいと改善に自販機自体どこにもなかった。気になったので、その後、何度も立ち寄ったが、以降はなにもともなく卒業して引っ越した。気まぐれに表れるマネキン人形と自販機、そしてチャリの駐車場は一体なんだったのだろうか、いまだに謎である。