自我のあるラブドールは作れる、だが人間は創造主になれるのか

いつの日か、AI技術の進歩で自我のあるセックスロボットが誕生し、パートナーとして愛ある関係を結ぶだろう。だが、それと同時に新たな義務も生じる

セックスロボットの進化はすさまじい。いつの日か人間を愛し、それゆえに苦しむ能力を備えるだろうと、専門家はみている。

人間のかわりになるセックスパートナーとして売り出されている最新型の「セックスボット」は、外見は不気味なほど生きた人間そっくりだが、人間のような意識はない。感情を模倣してユーザーを誘惑するだけだ。

「責任あるロボット工学財団」の昨年の報告によると、「アンドロイド型ラブドール」は乳首の形から陰毛の色まで好みにあわせてカスタマイズ可能、自動モードで50種のセックスの体位をとることができる。それでも、人間相手のように、たがいに愛し合う複合的な関係をもつことなど、とうていできない。

しかし、ケント大学法科大学院で法律・医学倫理学部長を務めるロビン・マッケンジーによれば、人工知能とロボット工学の進歩によって、いつか知性を備え、自我をもつセックス用ロボットが誕生するという。

ある意味では、「自我をもつセックスボット」の登場は、人類と宇宙人の最初の出会いに似ている。「人間に似ているが、まったく異質の存在だ」と、マッケンジーは技術情報サイト「テックスプロア」で語っている。

愛を知れば苦しみも知る

セックスボットはいずれ「相互に性的で親密な関係をもつ能力」を備えるだろう、とマッケンジーはロボット工学専門誌に掲載された論文で予測した。注意すべきは、もし人間がこうした知的能力の創造に成功したなら、作り出した疑似人間の面倒を見る義務が生じる。

こうしたマシンは逆説に満ちた存在になる、とマッケンジーは指摘する。作りものだが、意識がある。自我はあるが、相手の人間のニーズを満たすことだけを目的に設計されている。

テックスプロアに対してマッケンジーはこう語った。「セックスボットは自己カスタマイズ化の一環として、人間を愛し、人間についての深い知識を身に付け、そして苦しむ能力を獲得するだろう」

「苦しみ」はロマンチックな人間関係において、人がパートナーに適応する際に必ず生じるものだとマッケンジーは主張する。この苦しみが「自分自身や他人についての貴重な洞察をもたらし、そのおかげで以前より幸せで、よい人間になることができる」。

「だが、セックスボットにそれほどの苦しみが必要なのか」と、彼女は問う。

最近、出会いを求める人々は、デート・アプリで自分の特性を宣伝し、見込みのありそうな相手を物色して、なかなか得られない「完璧なパートナー」を探している。こうした出会い仲介ビジネスは、個人の需要に合わせることができ、意識のあるセックスボットが登場する前触れのような現象だと、マッケンジーは言う。

人が完璧なパートナーと思われるものを開発したとしたら、そこには「葛藤」が生じるだろう。それは、健康的でロマンチックな関係における愛と親密さは搾取的であってはならず、対等なパートナー関係という基盤の上に構築されるものだという考えと対立するからだ。

「創造者としての人間は、創造した知的存在の利益を守り、苦しみを最小化する義務がある。技術の先走りで問題が起きる前に、倫理的、法的および設計上の規制を確立するべきだ」と、マッケンジーは説く。

人間以外の知的な存在、特に人間が創造したものに対していかに対処するか。これはきわめて奥の深い課題だ」と、彼女は指摘する。「セックスボットをはじめ、自我と意識のある存在をいかにして設計するのか、そして誕生した存在を、人間はどう扱うのか