中国のセックスドール店は閉鎖されたとは!なぜ?

人形が客の相手をする深圳の人気店が突然閉鎖に追い込まれたのはなぜ? どんな店だったのか?

 

中国で、セックスドールが客の相手をする風俗店の草分けが当局に閉鎖された。

広東省深圳にあるその店は地元の客で賑わっていたが、警察の指示で今月突然、閉鎖に追い込まれた。経営者のリー・パイ(34)は処分を不服として訴訟を検討している。

リーは市内で2店舗を経営。警察が捜査終了までの暫定措置として閉鎖を命じるまで、どちらも大繁盛していた。

処分の理由は明らかにされておらず、閉鎖はとうてい納得できないと、リーは3月23日、上海に拠点を置くオンラインのニュースメディア・澎湃新聞に語った。

「当局は何らかの指針を示して、このビジネスが存続できるようにすべきだ。これは確実にニーズがあるサービスで、多くの利用者が存続を望んでいる」

リーが深圳の竜華区に1号店Ai Ai Leをオープンしたのは2018年9月のこと。竜華区は、電子機器の受注生産の世界最大手で、iPhoneの部品などを生産している台湾企業フォックスコン鴻海科技集団)が、中国における最初の工場を建てた地区として知られる。住民の大半は工場で働く男たちで、リーは「商機あり」と見て、出店を決めた。

競合店が続々と出現

地元メディアによると、この地区には工場勤めの12万人の単身男性がいる。女性の工場労働者との人口比は5対1で、圧倒的な「男の街」だ。組み立てラインで働く男たちの間で、リーの店の評判は口コミで広がり、1日にざっと70人の客が詰めかけるようになった。

リーは地元政府に宛てた3月22日付の公開書簡で、店をオープンする前に、この種のビジネスに詳しい法律の専門家に助言を求め、地元当局に何度も足を運んだと述べている。

中国には売春を禁じた法律があり、違反すれば最高で10年の懲役刑となる。リーは店がこの法律に抵触しないことを確認した上で、サービスを開始した。中国ではセックス産業を白い目で見る風潮があり、セックスドールを使った店もタブー視されるが、法的にはグレーゾーンながらも営業はできると、専門家のお墨付きをもらえたからだ。

料金は1時間で98〜228元(約15〜35ドル)。このビジネスに手応えを感じたリーは、1号店に続いて数カ月後に、深圳の竜崗区にある華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の本社近くに2号店をオープンした。

リーの店の繁盛ぶりを見て、二匹目三匹目のドジョウを狙う業者が現れ、今や深圳では10数の競合店がしのぎを削っているが、本家本元にはかなわないと、リーは胸を張る。

リーは先週、香港の鳳凰衛星テレビの取材に応じ、自分のビジネスは労働者階級のニーズに応えていると言われるが、それはちょっと違うと語った。

「労働者階級のニーズじゃない。男のニーズだ」

リーの店のセックスドールシリコン製で、形状もサイズも様々。客が人肌のぬくもりを感じられるよう、40℃前後まで温めることもできる。

店内には照明を抑えた部屋がいくつもあり、客は自分の趣向に合わせ、オフィスやホテル風の部屋、刑務所の独房、病院のベッド、教室など、様々なシチュエーションを選べる。

最安料金の15ドルで利用できるのは下半身だけのセックスドール。手っ取り早く「目的を果たせる、おトクなサービス」だと、リーは言う。

「以前、週に1回来店する客がいた」と、リーは鳳凰テレビに語った。「話を聞いてみると、なんと妊娠中の奥さんに勧められて通い始めたというんだ。その客は奥さん以外とセックスしたことはないらしい」

客層は幅広い。性的欲求は、社会的地位や年齢に関わらず、「誰にでもある」と、リーは言う。

「ある時、歩行が困難な障害のある客がサービスを利用し、こんな感想を述べた。『今まで性欲を満たすのに屈辱的な思いに耐えてきたが、今回初めて自分の尊厳を保ってセックスを楽しめた』と。それを聞いて、これはやる価値があると使命感に燃えた」

「衛生管理も万全だ」

竜華区、竜崗区の2店舗とも3月11日に閉鎖に追い込まれたが、いまだに警察はその理由を明らかにしていないと、リーは言う。

多くの客がセックスドールを使うため、公衆衛生上の懸念から捜査が入ったとも考えられるが、リーによれば、昨年新型コロナウイルスの感染拡大で一時休業し、サービスを再開したときから感染対策を徹底している。衛生管理も万全なら、顧客の個人情報もきちんと管理しており、当局に睨まれるような問題は一切ない、とリーは断言する。

地元政府はAi Ai Leが売春禁止法に抵触しないことを認めたと、澎湃新聞は23日に伝えた。

中国のソーシャルメディアでは、この話題がトレンド入りし、リーのビジネスを応援する声が高まっている。(長く続いた一人っ子政策のせいで)女性より男性が多いこの国では、ラブドールの性サービスには切実なニーズがありそうだ。