ラブドール=女性嫌悪???(後編)

 展示観覧客のうち一部はSNSや国立現代美術館のYouTubeチャネルなどにコメントを書き込み、「作家がラブドールを作品の題材にして、この作家を公共機関が『今年の作家賞』の候補としたこと自体が巨大な女性嫌悪ミソジニー)」と主張する。また「デート暴力が社会問題になっている韓国で、物体になった女性身体をめぐり、男性の『心の傷』について語るのは女性嫌悪」とし「展示を今すぐ中断するべきだ」と主張した。オンライン上では「今年の作家賞_チョン・ユンソク_候補剥奪せよ」というハッシュタグが広がっている。

 



 しかし、チョン氏は「映画を通じて、変化する時代の中で各個人が選ぶ人生のあり方を通じて人間らしさとは何かに対する質問を投げたかった。具体的には人間の矛盾について語りたかった」と話した。中央日報が送った書面質問に対する回答で、チョン氏は「観点によってはこの映画の題材を見て不快感を感じる人がいると思う」としながら「だが、その不快感を通じて、私たちが一生懸命目をそらそうとしている現実を見ることになるだろう」と答えた。チョン氏は引き続き「明らかことは、今回の新作で提示した問題意識は、まもなく到来する未来であり、解決しなければならない問いかけ」としながら「『明日』という題名も、そのような観点で多義的な意味を込めた」と明らかにした。チョン氏はまた「映画の前半部で人間を商品化する資本主義社会を批判し、後半部では主人公が持つ矛盾と人間に対する不信を客観的に見つめようと努力した」と説明した。

 これについて美術界は「見る方向によって作家がラブドールを題材としてとらえ、これを芸術的に再現する方法に対して不快感を感じるかもしれないが、『女性嫌悪』と断定して作品を撤回するよう主張するのは行き過ぎ」という立場だ。



 ある専門キュレーターは中央日報の電話インタビューで「再現の領域で、多くの人々が不快に思ったり恥部だと考えたりすることなどを扱えるのが芸術」と話した。また、美術評論家のチェ・ヨル氏は「作品が直接あるいは直接的に倫理的な基準を越えたものでない限り、それを特定の観点で切って捨てるのは、妥当な態度とみることはできない」と話した。続いて「自分の考えだけが芸術と社会に対して絶対的に正しいといった主張は、ややもすると暴力的になりうる」としながら「むしろ今回のこと契機に、より多くの人々が共に討論し、芸術的な省察を行うほうが望ましいのではないか」と反問した。

 チョン氏は個人の生活と社会的事件の間の関係に光を当てるドキュメンタ ー映像を撮り続けてきた。

 2014年には犯罪組織「至尊派」の検挙、聖水(ソンス)大橋の崩落と三豊(サンプン)百貨店の崩壊を扱ったドキュメンタリー『Non-Fiction Diary』を発表し、2016年国家保安法を題材にしたドキュメンタリー『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』などを発表した。展示は来年4月4日まで。