記憶でのリアルドール

旧い城中村の中には、仰いでも、少しの灰色の空しかが見えない。場所が混み合い、環境が汚く、住民の状況が入り込んだっていうのは私以前に住んでいたところなんだ。ここでの生活がこの都市の長期的なスモッグ天候に合わせて、私だけの絶望の世界を醸し出していた。

あの年の夏からそこに来て、安い貸家を探しに行こうと思ったんだが、城中村の入り口から入ると、かなり臭い匂いがした。すると真面目に周りを見回したら、村口から両側に旧い売店とか、雑貨屋とか、家畜、野菜と肉を売る店がいっぱい並んでいた。たまたま家畜を殺し終わった店長のような人がそのまま内臓みたいな屑物をそばの下水道に詰め込んでいたのを見て、道理でその臭い匂いがしたわけだ。城中村の中の道路が殆ど高低で、人の往来もすごく頻繁で、なんだか一時に現代文明と隔離するような気がした。

城中村に入ってから、家主に引き連れられてたくさんの貸家を見たんだけど、なかなかいい部屋がないと言うより、普通の人間が住める部屋がないと言った方が適切だと思う。見ていた部屋が安いけど、その中にトイレもないし、全部二三十平米くらいの大きさで、しかもある部屋の中にすごく汚いし、埃がたくさん積もって、ゴミだらけの部屋もあるし、名前を知らない虫が地べたにそのまま死んだという部屋までもある。

貸家を探している途中で雨がすごく降り始めたせいで、私はとりあえずあるそこまで悪くない部屋を定めた。

程なく、自分の荷物なんか全部新たに借りた部屋に運んでいって、簡単な片付けをした後で、ついに安心になった。

私はこんなところを選びたくもないが、大学を卒業したばかりで、金が少ないし、この大都市に生きたいなら、とりあえず辛抱がすごく重要なんじゃないかなとその頃に思っていたんだが、でもその頃に思いついていなかったのは私の所謂辛抱が全部無駄になるという事実ということなんだ。

まあ、今はあの頃の経歴を思い出したら、後悔の気持ちが全くないと言っては、あまり自分にすまないんじゃないかなと思って、だけど、僅かないい思い出、つまりあの頃のいい経験はね、やはりリアルドールを買うことなんだ。

あの暗黒の日々には、私は仕事にうまく行かなかったし、金もうまく稼いでいなかったし、ずっと一人でその城中村に住んでいて、一人の友達もいないし、これほど最悪な人生で頑張り続けられる人間はいないんじゃないかな。なので、あの頃に自殺の思いも出たことがあるんだが、あの頃こそ、リアルドールというものが私を救ってくれた。

私はある日にゴロゴロして携帯をやって、ネットであるSoliddollsというウェブサイトを発見した。そのサイトの中には、色んなリアルドールがあり、そして私はある気に入りのドールを思い切って購入した。

そのドールはTPEという材料でできたリアルドールで、肌触りがすごく柔らかくて、本当の人間とそっくりだ。また私は巨乳が大好きなんで、購入する時にたくさんの時間をかけておっぱいのサイズとか、乳輪のサイズと色とかのをちゃんとほかのスタイルと照らし合わせてから購入したんだ。

とにかく、あの頃にそのリアルドールを買って良かったと今までも思っているんだ。そのドールは私が一番切なくて孤独の時期で私に付き添ってくれて、まさに助かった。

ある人は「記憶が潤いだ」と言ったが、確かにそうなんだ。

あの雨の日には、あの焦って部屋を借りたい人が軒下で雨宿りしながら、タバコを吸って、その出てきた煙が灰色の空へ漂っていって、消えてしまった。あの頃での記憶のようにある潤う雨の日にそっと煙って消えていった。