チャイナドールの進化ー前編

あらゆる分野で目覚ましい発展を続ける中国。その中でも台頭著しい業界がある。ラブドールの世界だ。

ここ5年で急激な発展を遂げて、これまでは「オリエント工業」と「4woods」という日本の二大メーカーの寡占状況だったが、チャイナ勢がその牙城を崩そうとしている。

10万円代の安いチャイナドールが本格的に普及して、日本にも輸入されています。日本製と比べれば半額以下という安さが受けて、一定の購買層が生まれています。もちろんクオリティの部分で日本製に劣りますが、それでも耐久性以外は同等レベルに迫るメーカーも出てきています

こう解説するのは、2年前から大阪でチャイナドールの代理店をする「WAGDOLL」の柏木代表だ。日本の第二の都市である大阪で専門店が出来ていることからも、その勢いが見て取れるが、いったいなぜ、チャイナドールは急成長を遂げたのか。柏木氏によると、実は中国国内の「お家事情」が関係しているという。

というのも、長きにわたる一人っ子政策がたたって、現在の中国の男女比には歪みが生じている。女性100人に対して、男性は118人。世界でも類稀なる「超絶格差の男性社会」となっているのだ。それもあくまで「表向きの数字」で、実際はこの数字以上に「男あまり」が進んでいると言われている。中国政府でさえも、おそらく実際の数字をつかめていないのではないだろうか…。

一生結婚できない男性が3000万人いるとも5000万人いるとも言われるなか、そこに目を付けたのが「中国の若き起業家たち」だ。「相手のいない男たち」の欲求を満たそうと、中国内で次々に「ラブドール製造会社」が勃興。習近平体制以降、中国国内で性風俗産業の摘発が進められたことも背景に、現在、中国にはラブドールを製作する会社が大小合わせて100社以上あるという。

中国では法律上、自国で製作されたアダルトグッズだけを認可して、輸入が禁じられている。つまり、日本製のラブドールは原則として税関を通過できないのです。これが結果的に中国メーカーの誕生を促している。労働コストの関係から、日本と比べれば安く製造できるので、価格競争力もある。そこで日本への輸出も始まり、日本のラブドール市場にも大きな影響を与えている、というわけです

中国はもともと模倣に関しては天下一品。初期は日本の老舗である「オリエント工業」のラブドールを見よう見まねで製作。お粗末な模倣品をつくっていた。当初は比べるべくもない代物だったが、時間とともに、品質が向上していったようだ。