女神降臨-究極のラブドール第2回

「ん……」
 ぼんやりと浮かぶ、見慣れた天井。
「あれ……俺……寝てたのか……」
 俺はベッドに横になっていた。
「あ……なんか……布団に……」
 寝ぼけてはいたが、何やら違和感に気づく。
 布団の中に大きな異物があるような……。
 バサッと布団をめくってみる。
 愛らしいラブドールが俺に抱きついていた。
「……そうかそうか!俺ラブドール買ったんだ!一緒に寝ちゃってたんだそうそう!そうだそうだ……」
 なんて言っていると、
 ラブドールは眠たそうに目をこすりだした。
「ひぃ!」
 思わず情けない声をあげてしまった。
 何が起こっているのか必死に脳を回転させる。
 そう、俺は昼間に届いたラブドール開封した。
 開封したら、ラブドールが喋り動き出したのだ。
 うん、わけわからん!
「なんなんだ一体……」
 ラブドールはいつの間にかコスチュームを着ていた。
 まるで不思議の国のなんとかさんを連想させる衣装……幻想服のライトブルー。
「ふにゅ……」
 動き出してしまったラブドールは変な声を出したかと思うと、
 俺を上目づかいでぼんやり眺めた。
 その愛らしいおメメはまぶたが半開きで愛らしかった。
 眠い系のジト目。
「おはおー……ますたあ……」
 首元まで顔を近づけてくるもんだから、
 甘い声が耳元へと伝い、チ●チンがジンジンしてしまった。

ラブドール

 しかし俺はそんな事よりもこの異常事態にパニパニパニックだ。
「おま、君、どこの幼女!?え、何、どういうこと!?おれ誘拐、え、誘拐?え、犯罪?あれ?何これもう!!」
「落ち着いて、マスターっ」
 ぎゅっ……と俺を抱きしめる美少女。
 甘い香りが鼻を突き抜け脳にダイレクトアタック。
「落ち着けるかぁぁ!!」
 俺は余計に荒ぶった。
「落ち着いてっ」
 ラブドールはそう言うと、突如光り出し、宙に浮く。
 え、どゆこと?
「嘘だろ……後光ごこうだ……ラブドールに後光が差している……!」
「私は、天界より下界のラブドールに降臨せし女神、ペトセティリカ・ミョンガルマ・フワトロ・パルパルプリリンモンモン」
宙に浮いたラブドールは相変わらずジト目のまま、急に自己紹介を始めた。
「略してペティ」
「いや、後半の印象強すぎるから」
「天界生まれ天界育ち」
「いや、展開についていけてないんだわ」
 しかし、ラブドールは自己紹介を続ける。
「いまだ神話に登場しない、見習い女神、ペティ」

ラブドール

「は……はは……はは……ははは……」
 混乱しすぎて目の焦点が合わなくなってきた。
 何なんだ一体。急にどうしたんだ。
 何を言ってるんだこのラブドールは。
「さて、落ち着いて話を聞いてね、マスター。今からちゃんと何から何まで説明するからっ」
 幼い声と見た目のラブドールは、宙に浮いたまま、
 俺の頭をよしよしと優しく撫でる。
「は……はひ……」
「マスター、私と一緒に戦ってほしいの」
「むりです」
 とりあえず即答した。
「マスターっ!最後までわたしの話、聞くのっ!」
 お叱りをうけた。
「ちょっと待ってくれよ……コーヒーとか飲んでゆっくり話そうよ……てか……とりあえずもう宙に浮くなよ……降りていいよ……」
「それもそか……ふわあぁあ……」
 女神はあくびをしながら眠たそうにベッドへと降りた。
 意外と物分かりはいいようだ。たぶん。
「でもあんまり時間がないの」
「ん……?」
 なんなんだよオイ。
 まさかとは思うが、次から次へとイベント発生しないでくれよ?
「戦いは、もう始まってるから。」
「……は?」
 これは……嫌な予感が……。
 と、その時。
 突如、玄関扉が爆発。
 豪快な、強烈な、
 爆発音が部屋に響き渡る。
 そして爆風で俺の布団が吹っ飛んだ

ラブドール

 ……。
 もう一度言おう。
 爆風で俺の布団が吹っ飛んだ。
 いや、まさか本当にそんなことあるんだな。ははっ。
「おおおおおおおおなんなんだよオイイイイイ!!」
 あまりに突然の事で、
 俺は慌てふためき飛びのいた。
 ペティことプリリンモンモンはというと、
 爆風の盾となって俺を庇ってくれていた。
「いだだだだだ!!」
 ……とはいっても身体が小さくて、何かの瓦礫やら破片やらが俺の顔に当たりまくっていた。
「なんなんだちくしょう!!」
 俺はワケもわからず叫んだ。
 部屋中に煙が立ち込めているので、玄関で何があったのか全くわからなかった。
「マスター、下がってっ」
 ペティは可愛らしい声を張り上げた。
「ちょ、ま……」
 理解が追いつかず俺が動揺していると、やがて部屋に立ち込めていた煙は、
 どこかに吸い込まれるようにすうっと消えた。
「お……おおおお……!?」
 そして、
「な……マジでなんなんだよ……」
 吹き飛んだ玄関に、見知らぬ男と、
 可愛らしい美少女が立っていた。
「みいつけた⭐︎」
 その見知らぬ美少女は、不気味に微笑んだ。
 そして、玄関をまたぐ。
「おいいいい!靴脱げえええ!」
 などと俺はもはやどうでもいいはずの事でブチギレてはみたが、
 そんなことお構いなしに、美少女と共にやってきた男も平気で土足で人の家に上がり込む。
「マスターっ、戦いの準備してっ!」
 その相手方の様子を見たペティが俺に声をかけた。
 なるほど、戦いか。
 俺は身構え、ペティに応えた。
「いや、しらんし!!」
 もうイヤ……。
 助けて、ママン……。