リアルドールと紅の破壊者ー第十回

前回に続いて・・リズまた旦那様のこと思い出した。

リズ:私、あなたと一緒に居られて、本当に楽しいです。私はあなたに救われました。何か、恩返しをしたいと思っているんですけど・・
アルバートふふ、その必要は無いよ。お礼を言いたいのはこっちなんだからね。僕のことを受け入れてくれて、一緒に居てくれてそれだけで、本当に幸せなんだ。君は優しい。その心を、僕だけではなく、誰かのために使ってくれないかい?君の救いを待ってる人がきっと居るよ。
リズ:き、機会があればそうしたいとは考えていますが・・でも、私、分からないんです。そういう人になんと声をかければ良いか・・だってその人たちは、ずっと自身で悩みを抱えて来ているんでしょう?しゃしゃり出てきた他人の言葉なんて、むしろ迷惑ではないですか?

ラブドール

アルバート君は大胆な子ではあるけれど、少し考えすぎる癖があるね。大丈夫、気を楽にしてごらん。僕だって、君に救われている。人というものはね、自分へ向けられる・・好意のこもった言葉に救われるんだよ。多少強引でも、言葉にすることに意味がある。僕もね、君の存在で、言葉で、毎日が花のあるような日々になったんだ。改めてお礼を言うよ。ありがとう、リズ。
リズ:ああ、いえ、お礼を言われるようなことは何もしていませんよ。私も、あなたのとこは愛していますからね。
アルバートふふ、そんな感じだよ。僕のことも毎日褒めてくれるし、笑いかけてくれるだろう?そうやって接してくれるのが一番だ。
リズ:え?そ、そうなんですか?それだけで良いんですか?あなたは私の言葉で、救われているんですか?
アルバート:そうだよ、リズ。君が思った通りに、したいようにすれば良いんだ。君がそれができる。だから安心していい。君は優しくて行動力のある。魅力的な女性なんだから。

また、リズの思いは現実に戻った。

ラブドール

リズ:私にも、この人を救えるのでしょうか。エリーさん、そんなことはありませんよ。エリーさんはあまり自分のことを言わないので、突然のことで少し驚いちゃいましたが・・可愛いものがお好みなんて素敵な趣味です。自分を可愛く着飾るのも、良いんじゃありませんか?

エリー:だから、俺は自分の容姿が嫌いで、そんなこと、許されな・・
リズ:許します!!あなたが許さなくても私が許すから良いんですよ!問題ありません!
エリー:そんなむちゃくちゃな・・
リズ:好きなものに囲まれると心が落着きますよね。あなたが自分のことを嫌いでも、これだけは忘れないでください。好きなものはあなたを否定していないんですよ。ずっと、あなたを見守っています。エリーさん、私、可愛いですよね!?
エリー:え?あ、ああ
リズ:好きですよね!?私のことが!
エリー:まあ・・
リズ:なら良いじゃありませんか!私が言ってるんですよ、あなたのことを許すって!

ラブドール

エリー:リズ、言ってることがめちゃくちゃだぞ。
リズ:それでも!良いですよ、エリーさん!エリーさんはエリーさんじゃないですか!私の前では自分を否定せず、好きなものは好きでいて・・胸を張って生きていて良いんですよ!
エリー:なんだそれ、本当に筋が通ってない。俺は自分の容姿が嫌いなんだって言ってるだろ。自分の問題だ。人がどう思うかなんて関係は無い。でも、少しだけ、救われた気がするよ。ありがとな、リズ。
リズ:ああそれと、あと一つ、いいですか?
エリー:今度はなんだ。
リズ:エリーさん、その赤髪とても素敵ですね。
エリー:・・!

ラブドール

リズ:あなたが眠っている間に少しだけ触らせてもらいました。ふわふわしていてツヤもあって毎日手入れをしているんでしょう?その髪、エリーさんによく似合っていますよ。
エリー:俺も、自分の髪はまだ、好きなんだ。癖毛ではあるんだが、この色もお気に入りで、だから毎日欠かさずに・・ああ悪い、本当に、久しぶりだ、こんな褒めてもらえるなんて・・ありがとう、リズ。本当に、嬉しい。
リズ:ふふ・・
エリー:どうして、お前はこうも・・ああ、やっぱり。俺に、こんなに優しくしてくれるドールは初めてだ。他のドールは、俺がデストロイヤーだとわかればすぐに怯え、俺を非難する。何故だかリアルドールは記憶が無くても、デストロイヤーへの恐怖の感情は残っているようで・・これが仕事と言っても・・罵声を浴びせられ、恨みのこもった目で見られるのは良い気分じゃない。ああ、まずいな。こんな感情を抱いてしまうからドールとの過度な接触はNGと言われていたのに・・少し、判断を間違えたのかもしれない。でも、それでも、できればもう少しだけ彼女と一緒に居たい。まだ、終わりにしたくはないな。